校長室より

校長  近藤 哲史

令和6年度

令和6年度 前期始業式 校長式辞(令和6年4月9日)

昨日の入学式で、入学を許可した新入生360名も加え、さらに先ほど紹介した新・転任の先生方もそろわれて、令和6年度が本日からいよいよ本格的にスタートしました。

さて、皆さんに一つ質問をします。皆さん、学習指導要領って聞いたことがありますか?

学習指導要領は、文部科学省が定めた、学校での学びの基準のことで、各教科の科目の目標や内容を全国統一で定めていて、学校はその科目の中から学ばせたいものを選んで授業を構成しています。これを教育課程と言います。文部科学省は、昭和33年に最初に定めて、以後、その基準を社会の変化に合わせておよそ10年に1回のペースで改訂しています。その7回目の改訂による教育課程が2年前の令和4年度の1年生(今の3年生)から始まりました。その年は、1年生が新基準で、2,3年生が前の基準、そして昨年度は、1、2年生が新基準、3年生が前の基準というように、学年によって基準が違っていました。それが、今年度は、3年目を迎え、3学年全てが新しい基準での学びに切り替わった最初の年ということになります。と言われても、皆さんは前の基準での学びを知らないので、その変化についてピンと来ないかもしれませんが、科目の名前や内容など、比べると大きく変わっています。教える側の先生の立場からすると、この変更への対応はなかなか大変であったと思います。生徒の皆さんに直接関わることとしては、3年生の皆さんが来年の1月に受ける共通テストがあります。今回は、情報のテストが新設されるなど他の教科でも大きく変わります。3年生の皆さんは、すでに承知のことと思います。

前置きが随分長くなってしまいましたが、大きく変わった点として、皆さんに伝えておきたいことがあります。2、3年生の皆さんは、これまでに聞いたことがあることかもしれませんが、全学年が切り替わった年のスタートとして改めて確認しておきます。

それは、「主体的・対話的で深い学び」の実現、ということが求められるようになったことです。「主体的・対話的で深い学び」とは、どのような学びでしょうか。やや漠然としているので、もう少し具体的な表現で言い換えてみます。1つ目は「自ら考え、判断し、決定し、行動すること」(まさに主体的な学び、「自ら」というところがとても大切)、2つ目は「多様性を尊重し、対話を通して問題を解決すること」(西尾高校には1070人の生徒がいて一人ひとり違う特性がある。そのことを理解するには対話が必要であり、それぞれの特性を理解して共に問題を解決してほしい)、3つ目は「問題を解決するために知識や情報、技術等を活用し、新たな価値を生み出すこと」(知識を得る(丸暗記)だけでなく、活用できるようになってほしい、そして今どきの言葉で言うとイノベーションを起こしてほしい)。どうですか。どのような学びか、イメージできますか。

このような学びの実現のために、先生方はさまざまな場面で、さまざまな働きかけをしてくれると思いますが、それを待っているのではなく、授業などの学習活動の場面はもちろんですが、学校行事や部活動、日頃の生活の中でも“自ら”意識して取り組んでいってほしいと思います。

この1年、生徒一人ひとりが「主体的・対話的で深い学び」を実現し、さまざまな場面で活躍する姿が見られることを楽しみにしています。

以上、令和6年度前期始業式の式辞といたします。

(令和6年4月9日体育館にて)

令和6年度 PTA入会式 校長挨拶(令和6年4月8日)

校長の近藤哲史です。お子様の御入学、おめでとうございます。

私は、この四月に西尾高校に赴任してまいりました。三月までは県の教育委員会に務めておりましたので、学校に戻ってきたのは四年ぶりとなります。この歴史と伝統のある西尾高校に赴任することができ、大変光栄に思っております。今後の西尾高校の一層の発展のため、精一杯努力してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、本校の生徒たちは、PTAの皆様からの、学校祭を始めとする学校行事や部活動への物心両面からのあたたかいバックアップを受けて、明るくのびのびと学校生活を過ごしています。

また、この三月までの令和五年度は、PTA役員・理事の皆様方の御尽力で、コロナ渦で制限されていた行事が徐々に本来の形に戻り、楽しく積極的にPTA活動がすすめてこられたと聞いております。新入会員の皆様も、可能な限りPTA活動に積極的に関わっていただくようお願い申しあげます。

それでは、この場をお借りして、二点お話しさせていただきます。

一点目は、本校における教育方針についてです。先日の職員会議で、今春の大学進学状況について報告があり、国公立大学への合格者が217名出たとのことでした。200名を超えたのは、18年ぶりだそうです。この数字を紹介したのは、単に数の多さを喜んでいるからではなく、生徒たちが求める学びのあり方に先生方がきちんと応え、支援したことが、このような結果に表れたのだということをお伝えしたかったからです。本校の教育で大切にしたいことは、入学式の式辞でもお話しましたが、一言で言うと、「主体性の育成」です。

具体的には、「自ら考え、判断し、決定し、行動すること」「多様性を尊重し、対話を通して問題を解決すること」「問題を解決するために知識や情報、技術等を活用し、新たな価値を生み出すこと」という三つができることです。なるべく教えること、指示することを控え、生徒自らが考え、判断し、自己決定、自己解決できるよう、さまざまな場面を設定してサポートしていきたいと考えております。

そこで皆様にお願いですが、ご家庭でもお子様が自己決定、自己解決できるようご支援いただきたいと思います。例えば、全然勉強しなくて注意したいという場面があったとします。そんなときはどうしても感情的になってしまいますが、ぐっとこらえて、まずは「どうしたの?」とシンプルに現状を聞き、「どうしたいの?」と意思確認をして、「私は何をしたらいい?」という問いかけを行い、「決してあなたのことは見放してはいない」「あなたのことを思っている」というメッセージを送ります。このような問いかけを行うと、子供は自分で考えなければならなくなります。何かあったときには、この「どうしたの?」「どうしたいの?」「私は何をしたらいい?」という三つのセリフにより、自己決定する機会を設けて、主体性を育んでいただきたいと思います。学校とご家庭が一緒になって取り組んでいけるよう御協力をお願いします。

二点目です。皆さんすでにご存じと思いますが、本校は、令和八年度に附属中学校を新設し、中高一貫校となります。皆さんのお子様が高校三年生になるときに、中学一年生が入学することになります。現在、開設に向けてさまざまな準備を行っており、来年度あたりから、新たな施設の建設工事が始まる予定です。工事が始まるとやや窮屈な思いをすることがあると思いますが、極力、在校生の学びの妨げにならないように配慮してまいります。また、三年生になったときには、学校行事などで中学生との交流の場面があると思いますが、高校生にとってもよい刺激となるような活動にしていきたいと考えております。中高一貫校のことについては、今後も必要に応じて情報をお伝えする予定です。

これから三年間、西尾高校の教育活動に対する御理解、御協力を賜りますことをお願いしまして、少し長くなりましたが挨拶とさせていただきます。

ありがとうございました。

(令和六年四月八日 体育館にて)

令和6年度 入学式 校長式辞 (令和6年4月8日)

おだやかな風に校庭の木々も芽吹きはじめ、新入生の皆さんを迎えるにふさわしい佳き日となりました。

本日、令和六年度愛知県立西尾高等学校入学式を挙行いたしましたところ、PTA会長・横山博様をはじめとするPTA正副会長の皆様、並びに新入生の保護者の皆様方の御臨席を賜りました。高いところからではありますが、御礼を申しあげます。誠に、ありがとうございます。

ただ今、入学を許可しました三百六十名の新入生の皆さん、創立百六年の輝かしい歴史と伝統のある西尾高校へようこそ。教職員・在校生徒を代表し、心から歓迎いたします。

また、こうして入学の時を迎えた、新入生の喜びの大きさもさることながら、本日までわが子の健康と幸せを願いながら、お子様を育くんで来られた保護者の皆様の喜びもひとしおのことと拝察いたします。心よりお祝い申しあげます。

さて、この西尾高校には、「生徒指導上の規則」というものがあります。入学のしおりに載っているので、すでに読んだ人もいるかもしれませんが、いわゆる校則です。この生徒指導上の規則は、令和四年度に生徒が主体となって、先生と相談しながらつくられたもので、先生から一方的に与えられたものではありません。そして、この規則には、生徒からの希望で「前文」がついています。それを今から読み上げます。

「前文」【生徒会からの本規則に対する理念】

本規則は生徒が健全で秩序ある学校生活を送るためにあり、校訓の進取・自主・克己の精神を受け継ぐものである。また、今後も必要があれば生徒・教職員の相互信頼をもって見直しをしていくものとする。とあり、続いて校訓である進取・自主・克己という三つの言葉の生徒たちが考えた解釈がついています。これも読み上げます。

進取とは、自ら進んで課題を見つけ、社会に目を向けて多様な考えを取り入れながら解決すること。自主とは、西尾高校という私たちの社会を過ごしやすいものにするため、自主的に物事を考えること。克己とは、学校は全ての生徒が関わる公共の場であることを踏まえ、自らを律すること。とあります。大変すばらしい解釈であると私は感じています。というのは、この三つの解釈には、将来の予測が難しいと言われている日本の社会を生き抜くために必要とされる資質・能力がうたわれているからです。予測困難な社会とは、生産年齢人口の減少やグローバル化の進展、絶え間ない技術革新などにより、社会構造や雇用環境が急速に変化することです。そのような中で生きていくには、社会の変化に主体的に関わり、「どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのか」という目的を自ら考え、よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力を身に付けられるようにすることが重要であると言われています。

新入生の皆さん、西尾高校での三年間、先輩たちがつくってくれた生徒指導上の規則、特に前文の三つの校訓の解釈を、心のまん中に常に置いて学校生活を送ってください。そうすれば、自然とこれからの社会で生きていくための力が身に付いているはずです。これからの皆さんの活躍を楽しみにしています。

保護者の皆様、今日から大切なお子様をお預かりし、教職員一同、心を込めてお子様を鍛え、成長させてまいります。そのためには、本校の教育活動に対する保護者の皆様の御理解と御協力を欠かすことができません。今後とも本校の教育活動に御支援を賜わりますよう、お願い申しあげます。

結びに、皆さんが充実した西高生活を送り、自分の進路目標を達成して笑顔で卒業することを願い、式辞といたします。

令和六年四月八日             

愛知県立西尾高等学校長  近藤哲史